生と死の世界を行き来する、ホラーアドベンチャー『The Medium』
今回そのPC版をクリアすることができたので、さっそくレビューをしてみる。
The Mediumをレビュー
タイトル |
The Medium |
ジャンル |
ホラー |
発売日 |
2021.1 |
プラットフォーム |
Xbox Series/PC |
クリア時間 |
5時間~10時間 |
スコア |
70点 |
The Mediumをプレイしていると、コナミから発売されている「サイレントヒル:ホームカミング」思い出す(日本未発売の作品だけど…)
実際、The Mediumの音楽はサイレントヒルシリーズの山岡 晃氏が担当しているそうだ。
※ただ、作中ではサイレントヒルほど印象に残る音楽がなかったのは残念だった。
美しい背景に対してキャラデザインが少し粗いのも気になるけど、インディーゲームとして見れば十分合格点と言える。
定点カメラによる操作に少し癖があるけど、葬儀の準備(チュートリアル)を進めるうちにすぐに慣れることができた。
主人公のマリアンは、死後の世界と繋がれる特殊能力を持っており、時には死者と直接会話する事もできてしまう。
マリアンにとってあの世と繋がることは、日常に起こりうる一つの現象。
本作で描かれるホラー演出に対しても、彼女はすでにある程度の耐性を持っている。
とはいえ、本作はホラー要素だけでなくストーリーも丁寧に作られており、
2021.1時点では対応しているハードウェアが少ないのが残念だけど、今後SwitchやPSにも移植されそうな、そんな口コミで人気が出てきそうな作品である。
怖さと謎解きの絶妙なバランス
本作には銃やナイフといった攻撃の類が存在しない。
個人的に”逃げるだけ”のホラーゲームはあまり得意ではないんだけど、本作はそこまで苦にならなかった。
恐怖心を煽る演出も多いけど、先に進むのが怖くなるような過度なものは少ない。
前述のように、マリアンがすでにそういった状況に慣れてしまっているのもプレイしていて心強く感じる。
この恐怖感の調整が上手く出来ており、怖いだけでなく、ストーリーを楽しめるよう余裕のある作りになっている。
地獄のような風景でも、その作り込みを堪能する余裕を持てる。
また、謎解きの難易度もちょうどいい塩梅。
攻略サイトを見ないと詰まるような難しさでもなし、かと言ってヒントだらけの作業ゲーでもない。
マリアンの霊能力が多くて使い所に困るのが難点だけど、コツを掴めばすぐに慣れる。
幽体離脱や透視など、霊能力を駆使して謎を解いていく。
ヒントが少なくて迷ってしまうこともあったけど、手あたり次第に霊能力を使っていれば解決することがほとんど。
謎解きもパズルのようなミニゲーム的なのが多く、適度に楽しみながら攻略することができる。
定点カメラによる三人称視点が懐かしくも美しい
本作では最近のTPSに見られるビハインドカメラ(肩越し視点)ではなく、昔ながらの定点カメラを採用している。
少し前までは当たり前だったカメラアングルも、今プレイすると懐かしい気分になってしまった。
初期の「バイオハザード」や「サイレントヒル」を彷彿させる構図。
実際にプレイしてみると、この定点カメラがホラーゲームと相性がいいことに気付かされる。
一人称視点や肩越し視点の場合、制作側の意図する演出とプレイヤーの視点がズレる可能性が出てくる。(突然扉が閉まる演出を、たまたま後ろを向いてしまい見逃すなど)
しかし定点カメラの場合、キャラの位置こそ違えど背景は固定されるため、制作側の見せたい背景、見せたいシーンを、限りなく完璧な状態で体験することができる。
デメリットとしては、誰がプレイしても同じに見えてしまうことだけど、ストーリーを楽しむ本作のようなゲームには有効な手法と言える。
あと、定点カメラと言えば、カメラの切り替えポイントでキャラが迷子になるのはご愛敬。
この世とあの世の二分割同時操作
古き良き時代を感じる定点カメラの構図。そこに新鮮味を加えるのが、本作の特徴とも言える二分割同時操作画面。
この世とあの世の世界を、上下、もしくは左右に分割して表示する。
あっちの世界では見えないものが、こっちの世界では見える。こっちにない道があっちにはある。
2つの世界を行き来しながら、パズルのように謎を解いていくのは中々新しい感覚だった。
一度に2つの世界を体験する。
この二分割画面こそワイドモニターにピッタリと思うけど、残念ながら私がプレイした段階では未対応であった。
モーションや操作性は古臭い
本作で気になる所があるとすれば、モーションやインターフェイスの古臭さだろうか。
緊張感を削ぐジョギングのようなダッシュや、探索のペースを乱す段差の上り下りモーション。
プレイしていれば慣れてはくるけど、サクサクと進めたい人にとってはストレスになるかもしれない。
UIも良く言えばシンプル、ただ面白みがない。
武器や回復アイテムといったものが登場しないので、アイテム画面を開くことも少ない。
おぞましいがグロテスク度は低め
冒頭でも紹介した「サイレントヒル:ホームカミング」
こちらはグロテスクな表現が規制に引っかかり、日本では発売できなかった作品である。
それに比べると、本作は誰でも遊べる程度に抑えられてはいる。(18歳以上対象ではあるけど)
進むのを躊躇ってしまうようなステージもある。
斬り刻まれて内蔵が飛び出るような、目を背けたくなるようなシーンはないので安心してほしい。
どちらかと言えば、想像を掻き立てられるような抽象的な表現が多い。
「The Medium」レビュー・まとめ
全体的に丁寧に作られており、ホラーゲームに抵抗がなければ誰でも楽しむことができる。
少し中だるみしてしまうところもあるものの、それでも”プレイするホラー映画”として最後まで楽しむことができた。
謎解きとストーリーがメインであるため、連続しての周回には向いていないけど、映画の代わりにサクッと遊んでみたり、実況用でプレイするのもいいかもしれない。