Amazon Primeにて『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』を鑑賞したので、忖度なしでレビューをしていく。
『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』の評価が気になる人は参考にしてみてほしい。
※本記事にはネタバレ・忖度無しの意見が含まれています。
シン・エヴァンゲリオン劇場版:||をレビュー【80点】
引用:Amazon
90年代から続く「エヴァンゲリオン」シリーズ。
食わず嫌いもあり、これまでのシリーズはほとんど見たことがなく、TVシリーズはおろか、劇場版も未見。※メディアから無意識に入ってくる程度の知識のみ。
逆にこれは貴重な体験じゃないかと言うことで、今回は過去の劇場版シリーズをすっ飛ばし、いきなり最終章となる『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』を鑑賞してみることにした。(ファンからしたら、なんて勿体ないことをと思われるかもだが)
シリーズへの思い入れや、ファン補正はなし。
純粋に一本の映画として本作をレビューしてみようと思う。
「これからの」エヴァンゲリオン
開始早々「これまでのエヴァンゲリオン」と題し、過去の劇場版シリーズのダイジェスト映像が流れ始める。
「これは初見には助かる」、と思ったのもつかの間、ただひたすら格好良い映像が流れ、そのまま本編が始まってしまった。
初見の私にとってはあまりにも荒唐無稽なこの映像。
でも、ここで一つだけわかったことがある。
そして、怒涛のオープニングが始まっていく。
ちなみにこのダイジェスト映像「これまでのエヴァンゲリオン」は、映画公開前にYouTubeですでに配信されいたらしい。
(監督)庵野秀明構成と表記してあるように、予告というよりは、これも一つの作品ということだろう。
世紀末から新世紀を描くミュージカルアニメ
私にとって『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』は、まるでミュージカルのような映画だった。
セリフ、音楽、アニメーション、それらがすべて計算つくされたタイミングで配置され、リズムを刻みながら観客へと届けられる。
オープニング早々、流暢すぎるセリフを浴びせてくる登場人物たち。固有名詞は勿論、その言い回しまで、何を言っているのか一つも理解できない。しかし、なぜか一語一句そのすべてが頭の中へ吸い込まれてくる。
さっきのセリフは?と聞かれても数秒前のセリフすら覚えられないレベルなのに、とにかくこの「セリフのようなもの」を体が全く拒絶をしていない。
「言葉」とアニメーション、そしてそれに合わせるようの流れる音楽と効果音。それらが1つのシーンを形成し、その集合体が『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』となる。
それらはもはや意味を届けることよりも、音を届けることを優先したミュージカルであって、少しぐらい意味がわからなくてもしっかりと心へ響いてくる。
サビ以外覚えていない、ライオンキングのハクナマタタと一緒。
そして最高にノリのいい曲を奏でるミュージカル『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』は、言葉が分からなくとも、直感的に楽しめる傑作アニメへと仕上がっていた。
最初からフルスロットル
冒頭のパリ奪還作戦。ここは本作屈指の盛り上がりを見せてくれるまさにサビの部分で、なおかつ本作のコンセプトを凝縮した名シーンでもある。
復元オペを進める赤木リツコ率いるヴィレ(WILLE)の隊員たちによる掛け合い、エヴァ44A航空特化タイプの襲来に合わせて鳴り響く音楽、そしてそれらを撃墜するエヴァ8号機βの迎撃アクション。
セリフ・音楽・アニメーションが完璧に調和しており、ここが面白くなかった人は、そもそもこの映画が合わない人なので、ここから先を見る必要はなくなる。
まさに『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』を表すオープニングと言えるだろう。
惜しむらくは、オープニングの勢いがありすぎて、続く第3村でのシーンが少々退屈になってしまうこと。
特にここで登場する主人公の碇シンジ。おそらく過去に(前作で?)よほど衝撃的な経験をしたのであろう、とにかくしつこいまでに精神の不安定っぷりを見せ続けられる。ここはアスカの言葉を借りると、
ただ、こればかりは初見が立ち入ってはいけない領域であるため、我慢をしないといけないところでもある。
一応、シンジの葛藤と同時進行で、綾波の「そっくりさん」の微笑ましい成長も描かれたり、非現実的でありながらもほのぼのとした第3村の日常も堪能できるので、飽きずに見続けることはできる。
わざわざ襖の溝を映すカメラアングルや、絵になる俯瞰の景色など、相変わらず映像としてのエンタメ性は高いので、流れは緩やかでも見所は多い。
お気に入りは真希波・マリ・イラストリアス
さんざん引っ張った割には、案外あっさりと立ち直ったシンジに拍子抜けしつつも、準備が整ったところでいよいよ最終局面へと突入する。
エヴァンゲリオンと言えば、シンジ、アスカ、レイの3人が主役といったイメージだったけど、今作では個人的にあまり馴染みのない、真希波・マリ・イラストリアスこと「マリ」がいいキャラを演じていた。
それこそ冒頭のシーンから最後の最後まで、明るく振る舞いながらも、「必ず迎えに行く」という一貫した言動は、本作に登場する誰よりも英雄的である。
一歩引いたところで姫(アスカ)を援護するなど、引き立て役としても魅せる場面が用意されていて、まさに隙のないキャラクターに仕上がっていた。
情緒が不安定なキャラが多く登場する中で、今回のマリと、ヴィレの総司令官である葛城ミサトは、言動がアニメ的でわかりやすく、観ていて気持ちのいいキャラクターだった。
面白みはないけど、最終章らしい風呂敷の畳み方
劇場版だけでも15年の歴史があるシリーズだけに、結末はファンがもっとも気になるところだろう。
そしてその結末は、比較的万人受けする丁寧な終わり方だったように思える。
アスカとマリによる最終決戦の幕開けから、徐々に抽象的な戦い(表現)へと変わっていき、最終的には何でもありの状態へとなってしまったけど、限られた時間にすべてのキャラクターへ救いを用意するには、あれぐらい濁すのが丁度いい。(すべての人が望んだ答えになったわけではないだろうけど)
黒幕、碇ゲンドウの動機についても、ものすごく昭和的ではあったけど、あれはあれでいいと思うし(訳のわからないことを言いだしたら、何のために戦ってきたんだってなる)、結末についても、お互い目を背けあってきた親子がようやく理解し合えるという、もの凄く分かりやすい形で締めくくられている。
決して衝撃的なラストというわけではないけど、エヴァンゲリオンを知らない(詳しくない)人が観ても、一本の映画として納得できる、もの凄く「守りに入った」良い結末だった。
シン・エヴァンゲリオン劇場版:||をレビュー・まとめ
『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』の個人的レビュースコアは80点。
最初から最後まで、すべてのシーンに「観る意味」があって、それは物語かもしれないし、音楽や美術かもしれない。
何年も前、押井守監督の「攻殻機動隊」や「イノセンス」を観たときに感じた、自分もこんなクリエイターになってみたい、そんな気持ちにさせてくれる魅力に溢れた作品になっている。
この映画を観て影響を受けた人が、いつか新しい「エヴァンゲリオン」を受け継いでくれるのではないだろうか。