『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』をレビュー【最終章にしては凡作】

Amazon Primeにて『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』を鑑賞しました。

『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』の評価が気になる人は参考にしてみてください。

※前情報として、ダニエル・クレイグ版『007』シリーズは鑑賞済み。
※本記事にはネタバレ・忖度無しの意見が含まれています。

『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』をレビュー【60点】

主演のダニエル・クレイグがジェームズ・ボンドを演じるのも本作で最後。2006年公開の『007/カジノ・ロワイヤル』から始まった、ダニエル版007シリーズも一旦の区切りとなります。

そんな最終章とも言える本作ですが、結論から言うと、フィナーレを飾るには少々物足りない出来でした。

既視感のあるストーリーに、魅力が感じられないキャラクター。そして、中だるみしてしまう160分の上映時間。

流石にアクションシーンは見所があるものの、それでも全体的に見れば、シリーズファン(そして、007に興味を持った一見さん)の期待に応えられるものではないです。

本作の最後に描かれる「衝撃的な結末」さえも、次の日には忘れてしまいそうなほど、とにかく印象の薄い映画でした。

高級レストランで食べる牛丼のようなストーリー

本作でまず気になるのが、その脚本。

「バイオ兵器によって世界征服を企む」なんて、いくら何でも中二病が過ぎます。

『ザ・ロック』や『ミッション・インポッシブル2』など、まるで90年代の金曜ロードショー。

 

単純明快でシンプル、誰でも楽しめると言えば聞こえはいいですが、007の世界観では完全に水と油です。

デンマークやジャマイカなどを舞台とする美しい景色や、スタイル抜群の登場人物など、

 

エレガントで上品な世界観。

そこが本作もとい007シリーズの魅力ですが、安っぽい脚本がその魅力を薄めてしまっています。

007に求めているのはB級グルメのような大衆料理ではなくて、上流階級専用の高級料理。

少々味付けが合わなくても、普段なかなか見れないものを見たいし、そこに憧れたいのです。

後世に語り継がれない悪役

引用:『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』

本作に登場する悪役、ラミ・マレック演じるサフィンも影が薄すぎです。

能面を被って登場する不気味なオープニングこそ、いつもと一味違う007を思わせるいい演出でしたが、

 

結局はそこだけだった。

そもそもサフィンの復讐の矛先が、ボンドではなく、ボンドの愛する女性マドレーヌというのはどうでしょう。

マドレーヌを苦しめるために、結果的にボンドが狙われることにはなりますが、5作も作ってきて、ダニエル版ボンドの最後の敵がぽっと出の新キャラ、しかも主人公との因果関係が弱いとあっては面白みに欠ける…。

いっそのこと、5代目ボンドのピアース・ブロスナンでも悪役で登場させたら盛り上がったはず。

個人的にはパロマがお気に入り

引用:『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』

悪役じゃないですが、アナ・デ・アルマス演じる新人エージェントのパロマはなかなか良かった。かわいい。

チャーミングな容姿は劇中でも完全に浮いていて、敵地に侵入しても全然溶け込めてないですが、それも踏まえていいアクセントになっていたと思います。

正直ジェームズ・ボンドの後釜であるノーミ(ラシャーナ・リンチ)は必要なかったから、もっとパロマとの共演シーンを増やしてほしかった。

とにかくこっちが望むものをわかってくれない映画です。

それでも、アクションは最高

引用:『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』

160分もの間、「退屈」な本作を最後まで鑑賞できたのは、華麗なアクションシーンのおかげ。

ダニエル・クレイグの50歳をこえているとは思えない肉体美…というのはもはや言うまでもなく。

バイクでイタリアの町並みを疾走するシーンでは、「降りる」よりも、「登る」演出の多用により、縦の動きが大きく躍動感も凄い。

教会付近で坂道を一気に登り切るシーンは、音楽の静止とともに息をするのを忘れてしまいました。

また、シリーズおなじみのボンドカー、アストンマーティンもしっかりと見所を用意されています。

ヘッドライトへ搭載されたガトリング砲など、本作の脚本に比べたら全然チープさを感じないですし、イタリアの街で繰り広げられるカーチェイスは『ワイルド・スピード』よりも全然ワイルド。

特にオリジナリティのあるアクションが目を引くわけではないですが、美しい舞台による補正もあって、どのシーンもそれなりに見応えがあります。

気になるとすれば、序盤のテロリストが研究所を襲うシーン。レーザーを使った侵入から、磁気センサーを使ったエレベーターの降下など、面白いには面白いです。しかし、いまいち007と世界観がズレていて、どちらかと言えば、007よりもミッション・インポッシブル。

結局の所、そういった「コレジャナイ感」が気になるのが『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』。

『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』をレビュー・まとめ

というわけで、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』の個人的レビュースコアは60点くらい。

ダニエル・クレイグが過去にジェームズ・ボンドを「もう辞めたい」と言ったらしいですが、流石にちょっと投げやりすぎる最終章でした。

決して駄作というわけではないけど、普通すぎる凡作で、上映時間が3時間近いのは正直キツいです。

過去作には面白い作品も多いので(『カジノ・ロワイヤル』や『スカイフォール』など)そちらを観てみて、気になった人はそのままの勢いで本作を観てみてもいいかもしれません。

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